0-4. プロジェクトの基本構造¶

実際の開発では、複数のクラスやファイルを整理して管理する必要があります。このセクションでは、Javaプロジェクトの構造とパッケージの概念を学びます。

パッケージとは¶

パッケージ（Package） は、関連するクラスやインターフェースをグループ化する仕組みです。

パッケージの役割¶

名前空間の提供
クラス名の衝突を防ぐ
例: com.company.util.List と java.util.List は別物
コードの整理
機能ごとにクラスを分類
プロジェクトの構造を明確化
アクセス制御
パッケージレベルでのアクセス制限が可能

パッケージの宣言¶

パッケージを使用するには、Javaファイルの先頭で宣言します。

package com.example.myapp;

public class MyClass {
    // クラスの内容
}

パッケージの命名規則¶

小文字のみを使用
ドット（.）で階層構造を表現
慣習: 逆ドメイン名を使用（例: com.google, org.apache）

例:

com.example.project         // トップレベル
com.example.project.model   // モデルクラス
com.example.project.service // ビジネスロジック
com.example.project.util    // ユーティリティ

ディレクトリ構造¶

パッケージはディレクトリ構造に対応します。

基本構造¶

myproject/
├── src/
│   └── com/
│       └── example/
│           └── myapp/
│               ├── Main.java
│               ├── model/
│               │   └── User.java
│               └── util/
│                   └── Helper.java
└── bin/  (またはout/) - コンパイル後の.classファイル

ファイルパスとパッケージの対応¶

パッケージ: com.example.myapp
ファイルパス: src/com/example/myapp/Main.java

パッケージの使用例¶

ファイル構成¶

src/com/example/myapp/Main.java

package com.example.myapp;

import com.example.myapp.model.User;
import com.example.myapp.util.Helper;

public class Main {
    public static void main(String[] args) {
        User user = new User("Alice", 30);
        Helper.printWelcome(user.getName());
    }
}

src/com/example/myapp/model/User.java

package com.example.myapp.model;

public class User {
    private String name;
    private int age;

    public User(String name, int age) {
        this.name = name;
        this.age = age;
    }

    public String getName() {
        return name;
    }

    public int getAge() {
        return age;
    }
}

src/com/example/myapp/util/Helper.java

package com.example.myapp.util;

public class Helper {
    public static void printWelcome(String name) {
        System.out.println("Welcome, " + name + "!");
    }
}

インポート（import）¶

他のパッケージのクラスを使用するには、import 文を使います。

基本的なインポート¶

import com.example.myapp.model.User;  // 特定のクラスをインポート

ワイルドカードインポート¶

import com.example.myapp.model.*;  // パッケージ内のすべてのクラスをインポート

注意: サブパッケージは含まれません

import com.example.myapp.*;  // com.example.myapp.model.Userは含まれない

完全修飾名の使用¶

インポートせずに、完全修飾名で直接参照することもできます。

public class Main {
    public static void main(String[] args) {
        com.example.myapp.model.User user = new com.example.myapp.model.User("Alice", 30);
    }
}

標準ライブラリのインポート¶

Javaの標準ライブラリもインポートが必要です（java.langパッケージを除く）。

import java.util.List;
import java.util.ArrayList;
import java.io.File;

例外: java.langパッケージは自動的にインポートされる

// 以下はインポート不要
String str = "Hello";
System.out.println(str);
Math.sqrt(16);

コンパイルと実行（パッケージ使用時）¶

ターミナルでのコンパイル¶

プロジェクトルートから:

# 方法1: すべてのJavaファイルを指定
javac -d bin src/com/example/myapp/*.java src/com/example/myapp/model/*.java src/com/example/myapp/util/*.java

# 方法2: findコマンドを使用（推奨）
find src -name "*.java" | xargs javac -d bin

# 方法3: シェルの機能を使用（bash 4.0以降）
javac -d bin src/**/*.java

オプションの説明: - -d bin: コンパイル後のクラスファイルをbinディレクトリに出力 - src/com/example/myapp/**/*.java: すべてのJavaファイルを指定

binディレクトリの作成:

mkdir -p bin  # 事前にディレクトリを作成

実行¶

java -cp bin com.example.myapp.Main

-cp bin: クラスパスをbinディレクトリに設定
com.example.myapp.Main: 実行するクラスの完全修飾名

IDEでのプロジェクト構造¶

IntelliJ IDEA¶

IntelliJ IDEAでは、プロジェクト構造が自動的に管理されます。

MyProject/
├── .idea/           # IDE設定ファイル
├── src/
│   └── com/
│       └── example/
│           └── myapp/
│               └── Main.java
├── out/             # コンパイル済みクラスファイル
└── MyProject.iml    # プロジェクト設定

Maven/Gradleプロジェクトの標準構造¶

実務では、ビルドツールを使用した以下の構造が一般的です（詳細はSection 5）。

myproject/
├── src/
│   ├── main/
│   │   ├── java/          # アプリケーションコード
│   │   │   └── com/
│   │   │       └── example/
│   │   │           └── myapp/
│   │   └── resources/     # 設定ファイルなど
│   └── test/
│       ├── java/          # テストコード
│       └── resources/
├── target/ (Mavenの場合) または build/ (Gradleの場合)
└── pom.xml (Maven) または build.gradle (Gradle)

アクセス修飾子とパッケージ¶

パッケージはアクセス制御にも関係します。

修飾子	同じクラス	同じパッケージ	サブクラス	すべて
`private`	○	×	×	×
(デフォルト)	○	○	×	×
`protected`	○	○	○	×
`public`	○	○	○	○

デフォルト（修飾子なし） は、同じパッケージ内からのみアクセス可能です。

package com.example.myapp;

class DefaultAccessClass {  // パッケージプライベート
    void defaultMethod() {
        System.out.println("Same package only");
    }
}

まとめ¶

パッケージ: クラスをグループ化し、名前空間を提供
ディレクトリ構造: パッケージ名に対応したフォルダ構成
import文: 他のパッケージのクラスを利用
完全修飾名: com.example.myapp.Main の形式
コンパイル: -d オプションで出力先を指定
実行: -cp でクラスパスを指定し、完全修飾名で実行

実務では、MavenやGradleなどのビルドツールを使うことで、これらの管理が自動化されます（Section 5で詳しく学びます）。

次のセクションからは、Javaの基本文法を学んでいきます。